コラム「繰り返しを用いて理解につなげる」―落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ―【6】

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コラム「繰り返しを用いて理解につなげる」―落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ―【6】

 近年、落語の人気が急上昇。この落語ブームにあやかって、落語に見るコミュニケーション術を、本コラムではお話ししていきます。
(文/山田敏弘〔岐阜大学教育学部シニア教授、専門:日本語学・方言学〕)

繰り返しを笑いにつなげる妙

 落語ブームで、若い落語家も多く、高座に上がるようになりました。並み居る若手実力派でひときわ光るのが、柳家三三(さんざ)です。まだ43歳という若さながら古典落語を絶妙に語ります。

 「看板のピン」といえば、1から6の目を当てるサイコロ博打(ばくち)で、ボケたふりをした楽隠居親分の老練な芝居によって、若い博徒(ばくと)がコテンパンにされる話です。三三さんは博打場の緊張感と若者の滑稽さを、語りひとつで見事に表現しています。

 親分は、わざとつぼの外にピン、つまり1の目をさらし、「つぼの中が勝負だ」と繰り返します。そして「いざ勝負」というときに、外に置いたサイコロを「看板のピンはこっちへしまって」と片付けてしまい、掛け金を総取りします。何度も繰り返し忠告しても、欲に目がくらんだときには聞いていないものなのです。

 「看板のピン」という話の面白みは、負けた若い博徒が別の博打場で、楽隠居のまねをするところにあります。ここでも、この博徒は先ほどの手口を繰り返します。若いくせに「今年は61の本卦還り(ほんけがえり)」と言ったり、「耳がかすんで目が遠くなる」とあべこべに言ってみたりで、笑いも最高潮に達します。

 ビジネスパーソンにも繰り返しは重要です。笑いを誘う必要はありませんが、商談の要を繰り返し、確実に理解してもらうこと。落語もビジネスも基本は同じです。

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