コラム「繰り返しを用いて理解につなげる」―落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ―【6】

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コラム「繰り返しを用いて理解につなげる」―落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ―【6】

「仏の顔も三度まで」とはいかない

 同じ言葉を三度繰り返す手法が用いられることがあります。「宿屋仇(やどやがたき)、宿屋の仇討(あだうち)」は、その定番作品です。こちらも若手の実力派、春風亭一之輔の語りから探ってみましょう。

 宿屋に泊まった侍が宿の「若いもん」である伊八に対し、「昨夜は相州小田原大久保加賀殿の城下、浪花屋と申す間狭な宿に泊まりしが、何はさて有象無象ひとつところに寝かし置き(中略)、ろくろく休むことができん。今宵は間狭な所もいとわぬで静かに休ませてもらいたい」(春風亭一之輔「宿屋の仇討」より)と静かな部屋を所望しますが、そこは落語。隣室に泊まった3人組が騒ぎ出すたびに伊八を呼び出し、前述の文句を繰り返します。

 一度目は芸者遊び、二度目は相撲、三度目は大悪事をしでかしたとうそぶく仲間をはやし立てた際に、伊八を呼び出し述べるのですが、三度目となると観客は大笑い。しかし、この笑いはくどさゆえのこと。「仏の顔も三度まで」とのことわざもあるように、三度目の失敗は落語では笑って済ませてもらえますが、ビジネスでは許されません。ビジネスでは良い繰り返しをうまく用い、悪い繰り返しを防ぎましょう。

☆山田敏弘さんのプロフィール

やまだ・としひろ 岐阜大学教育学部シニア教授(専門:日本語学・方言学)
1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」「日本語文法練習帳」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。2016年4月から17年3月まで、ラジオ深夜便(NHKラジオ第一放送、毎月第3木曜深夜)のコーナー「暮らしの中のことば」に出演した。

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【2】コラム「生敬語のススメ~敬語は気持ち~」
【3】コラム「聞かせるには、まず尋ねること」
【4】コラム「言葉の時流を読み間違えない」
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