攻める中小企業 勝負の一手~攻めのIT経営中小企業百選より~【2】明治大学・岡田浩一教授インタビュー

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攻める中小企業 勝負の一手~攻めのIT経営中小企業百選より~【2】明治大学・岡田浩一教授インタビュー
明治大学 経営学部教授・岡田氏

ヒトという経営資源をITによって効果的に活用し、価値を提供

――「百選」に選んだ企業で、特に印象に残った取り組み事例には、どういったものがありましたか。

岡田 「百選」に選んだ100社は、使っているツールもアプリケーションも手法もそれぞれ違いますが、共通しているのは市場、消費者、取引先企業、これらの人々が求める価値をITによって拾い上げ、極めて効率的に提供しているという点です。

 中小企業はヒト・モノ・カネ・情報という経営資源が大企業に比べると乏しいと言われますが、その中でもヒトという経営資源は可能性に限界がない資源と言えます。選んだ企業で特に印象に残っているのは、ヒトという経営資源をITによって効果的に活用し、価値を提供している取り組みです。

 介護サービス事業を手がけている企業の話になりますが、この企業はフルタイムで働くのは難しいが、その代わりに隙間時間なら介護士として働けるという人々を「グループウエア」を使ってスケジュール管理し、それぞれのライフスタイルに合わせて働けるようにしました。またシームレスな業務を展開していけるよう、利用者の介護サービスの内容が記された日報情報の共有なども行い、事業者間での均一な介護も実現させました。

 介護事業は長らく人手不足が叫ばれていますが、この企業ではそうした課題を克服して、過去5年間の売り上げの伸びは約2.7倍となり、専門職員の定着率向上や、利用者満足度評価が上がるなど、様々な効果が見られたのです。働きたくても働く場がないという人々を活用したこのようなダイバーシティー経営は、少子高齢化などで人手不足に悩む業種にとっても非常に参考になると思います。

 自社のウェブサイトに訪問した人が、サイト内でたどった経路を追跡するログ解析を行うことで売り上げを伸ばした企業も印象に残っています。この企業はプラスチック段ボールの製造販売を行っているのですが、同業他社が苦手とする「多品種少量市場」の注文に重点を置き、検索エンジン最適化(SEO)対策に資金を投入して、小ロット需要の顧客に向け、自社のウェブサイトをPRして集客するプル(Pull)型営業を行っているので、営業はほとんど行っていません。

 1社から大ロットの仕事を受けるという業界の慣習に対して、日本中の小ロットのニーズを集めていくほうが大きな仕事になると発想の転換をしたのです。自社のウェブサイトをPRするだけでなく、受注見込みのある顧客を見いだすためのログ解析も行っているので、最低限の営業活動だけで利益を上げることができています。

 こうした取り組みは、人手不足で営業に人員を割けない中小企業にとっては、1つのモデルケースになると思います。

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