就活に詳しいアナリストが伝授 企業研究に役立つIR情報【5】 キャッシュフロー

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就活に詳しいアナリストが伝授 企業研究に役立つIR情報【5】 キャッシュフロー

 20年以上にわたり証券アナリストとして活躍。大学で就活支援も行う、企業と就活の専門家が、「IR情報」を活用した企業研究のやり方を分かりやすく解説します。
(文/日本経済大学経営学部教授 兼 キャリアサポートセンター長、証券アナリスト  西村尚純 ※プロフィルは3ページ目)

「営業キャッシュフロー」は稼ぐ力を表す重要な数値

 今回はキャッシュフローについて解説します。キャッシュフローは企業の現金の流れを表したもので、営業活動によるキャッシュフロー(営業キャッシュフロー)、投資活動によるキャッシュフロー(投資キャッシュフロー)、財務活動によるキャッシュフロー(財務キャッシュフロー)の3つがあります。専門家によってはキャッシュフローのことを企業の「潤滑油」あるいは「血液の流れ」と表現する人もいます。

 このうち、みなさんに注目してほしいのが営業キャッシュフローです。営業キャッシュフローは会社が営業活動によって1年間にどれだけの現金および現金同等物(=容易に換金可能であり、かつ価値の変動について事実上リスクがほとんどない短期投資のこと。例えば取得日から満期日までの期間が3ヵ月以内の定期預金、譲渡性預金などを指す)を得たかを表しています。

 筆者が現役の証券アナリストだった頃は、営業キャッシュフローを最も重視していました。営業キャッシュフローは企業が本業でどれだけ現金を稼ぐことができたのかを表しているからです。

 財務会計を専攻した学生の皆さんはご存知かと思いますが、損益計算書で売上や利益が計上されるタイミングは必ずしもキャッシュの流れとは一致しません。タイムラグ(時間的なズレ)があって一致しないケースが多く見られるのです。

 例えば、ある企業の決算で売上高や利益が増加しており順調に見える場合で、すでに製品や商品、サービスなどを提供済みではあるのですが、実際の入金は3カ月後や6カ月後ということがよくあります(=売掛金といいます)。つまり、その決算期で売上高や利益に計上してはいるものの、キャッシュが入っていないことになります。企業によっては、売掛金が増えすぎてキャッシュが不足し、運転資金がショートして倒産する(=黒字倒産)事態もありえます。

 このため営業キャッシュフローが企業の命運を握る重要指標の一つであり、プラスが多ければ多いほど本業で稼ぐ力の大きい良好な会社といえます。

 また営業キャッシュフローをチェックする際は、少なくとも前の期とその前の期の2年間、できれば5年間の推移を見るといいでしょう。第2回に紹介した趨勢(すうせい)分析を営業キャッシュフローでやってみるのです。ちなみに、直近の決算2期の営業キャッシュフローは決算短信の冒頭のページや『日経会社情報』(日本経済新聞出版社刊)などの書籍に掲載されています。

 営業キャッシュフローが増加傾向にあれば会社の本業で稼ぐ力が順調に拡大しており、逆に減少傾向にあれば本業の稼ぐ力が弱っていると判断できます。とくに営業キャッシュフローのマイナスが続いている、あるいはプラスからマイナスに転じているという企業は要注意企業と考えたほうがよいと思います。

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