企業が新卒採用で筆記試験をやめない理由

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企業が新卒採用で筆記試験をやめない理由

 就職活動を終えた先輩たちに話を聞くと、「筆記試験対策をもっと早く始めていればよかった」という声が多く上がります。新卒採用の手法は変わることはあっても、筆記試験を行わない会社はほとんどないようです。では、なぜ会社は筆記試験を行い、学生を絞り込もうとするのでしょうか。今回は「筆記試験の意義」について解説します。
(文/武蔵野音楽大学就職課主任 兼 会計学講師 大内孝夫 ※プロフィルは2ページ目)

仕事に直結したパソコンスキルや語学力などで選考すべきか?

 ほとんどの企業の新卒採用試験には筆記試験があります。みなさんの中には、企業が「面接重視」というのであれば、「筆記試験は不要ではないか?」と思う人もいるでしょう。実際、学生にアドバイスをする就職コンサルタントの中にも、そのようにお考えの方もいるようですし、算数や数学の問題が解けるよりは、パソコンや英語能力のほうが会社の仕事に直結しているので、それらの能力を試験すべき、との考えもあるようです(注)。

 しかし、銀行で約30年間働き、新卒採用にもかかわった経験のある身からすると、そのような考え方に対しては、「会社のことがまるで分かっていないな」と感じます。

 今回、私が「企業が新卒採用で筆記試験を行う理由」を採り上げるのは、企業にとっての筆記試験の重要性をみなさんが理解すれば、納得性が高まり、筆記試験対策に前向きに取り組めるのではないかと考えたからです。この先の説明を読んで、「よし、それなら頑張るぞ!」と考えていただければと思います。

筆記試験では会社の目的を果たすための基礎力がみられている

 企業にはそれぞれ目的や目標があります。それを達成するために戦略を練り、その戦略を遂行するための戦術を立てます。概念的には「目的・目標⇒戦略⇒戦術」という階層構造です。この中で、パソコンスキルや英語力というのは、戦術実行の際に必要な1つの「手段」に過ぎません。必要な場に居合わせれば、自ずと身に付けざるを得ないもの、と言い換えてもいいでしょう。

 これに対して、「論理的思考能力」や「数的処理能力」は、企業の目的・目標の策定や戦略立案の土台となるものです。企業(あるいはその各部署や支店といった組織も同様です)は株主や取引先など、さまざまな利害関係者に対して売上高、利益などの数字に関する説明責任を負っています。

 ですから「論理的思考に弱い」「数字に弱い」ということは、企業人として「数字による説明責任を果たせない人」というのと同義語なのです。筆記試験で必要とされる基礎学力は、企業人になった際も必要不可欠なものと受け止め、しっかり取り組んでいただきたいと考えています。

 論理的思考や数字に強くなれれば、企業人としてとても有利です。これらに強い人は勝負強い人であることも多く、入社後の昇進・昇格にもプラスになると考えられます。なお、「数字に強い」といっても何も微分・積分などの高等数学までは不要です。連立方程式や一次・二次関数、場合の数や確率などの基礎学力があれば、他社の企業分析や社内の業務計画立案には十分対応できると思います。

(注)典型的な誤解は、『中学受験のいわゆる「鶴亀算」を課すのは、パズルのようで入社試験にふさわしくない』などというものです。確かに小学生に解かせる場合は、連立一次方程式が使えないため「パズル」のようですが、中学生以上にとってはオーソドックスな連立方程式の問題です。企業では売り上げと利益など異なる目標の同時達成が求められることがあり、連立方程式を解くような考え方はとても重要です。

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