コラム「生敬語のススメ~敬語は気持ち~」―落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ―【2】

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コラム「生敬語のススメ~敬語は気持ち~」―落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ―【2】

 近年、落語の人気が急上昇。この落語ブームにあやかって、落語に見るコミュニケーション術を、本コラムではお話ししていきます。
(文/山田敏弘〔岐阜大学教育学部シニア教授、専門:日本語学・方言学〕)

職人が武士に対して珍奇な敬語を用いた結果……

 立川志の輔さんと言えば、なかなか高座のチケットが取れない落語家の1人でしょう。しゃがれた声で繰り出されるマシンガントークは、観客をあっという間に独自の世界に引き込み、魅了し続けます。今回は志の輔さんの人気演目でもある「八五郎出世」を題材にコミュニケーションのコツを探ります。
 
 「殿様」に見初められ、世継ぎを産んだ妹に会いに行くことになった八五郎。大家に、武士に対して職人言葉を使っていたら斬られてしまうと脅され、頭には「お」の字、おしまいには「奉る」を付けろと諭される。結果、出てきたのが次のような言葉です。

 「お私ことは、お鶴の方様お兄上、お八五郎殿にござり奉ります。この度、お鶴様がおガキをおひねりあそばし、まことに遺憾に存じます」

 下手な敬語が明白な付け焼き刃とわかり、観客は笑い転げます。ここで、殿様からは「よう分からん」との言葉。しかし、気持ちは伝わるもので、八五郎はすっかり殿様とうち解け、性に合った職人言葉を話し始めます。それにつれて2人の距離もぐっと縮まり、武士に取り立てようと誘いかけられます。現代のビジネスで言えば、大出世を持ちかけられるのですが、八五郎は自らの暮らしを変えるつもりはなく、丁寧にお断りするという話です。

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