コラム「堪忍袋を作って怒りを上手に消化」―落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ―【12】

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コラム「堪忍袋を作って怒りを上手に消化」―落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ―【12】

 近年、落語の人気が急上昇。この落語ブームにあやかって、落語に見るコミュニケーション術を、本コラムではお話ししていきます。
(文/山田敏弘〔岐阜大学教育学部シニア教授、専門:日本語学・方言学〕)

心にもないことは最後に馬脚が現れる

 パワハラが大きな社会問題となっています。

 閉ざされた小さな社会にいると、自分の力を誤解して、他人にとって迷惑な言動もいとわない人が、男女を問わず見かけられます。そんな人には、どう対処したらいいのでしょうか。

 久しぶりに行った立川志の輔独演会で、そのヒントが聴けました。「猿後家(さるごけ)」です。猿に似ているという大店の後家は、「さる」という言葉を聞くだけでも機嫌を損ねます。植木屋が「庭にサルスベリを植えたらいい」と言えば腹を立て、貸本屋の源さんが浅草で「猿回しを見た」と口を滑らせば、「恩知らず」とののしり、煮え湯をかけようとする。

 この後家の感情の起伏が「猿後家」の面白さですが、実際にこんな人が周囲にいたら気まずいもの。ましてや上司や取引先だったら最悪です。感情的になった人が相手では、ビジネスもうまくいくはずがありません。

 源さんも、世話になっている後家を相手にしては、取りなすしか手がありません。美人の描かれた錦絵を持って後家に似ているとごまをすったり、「猿回し」を「皿回し」と聞き損ねたのだと、後家に責任転嫁をしたりしつつ、褒めそやします。最後に「小野小町」のようだと持ち上げると、すっかりえびす顔。おかみさんは上機嫌になって、大金を与えようとします。

 しかし、心にもないことをしゃべっても、最後には馬脚が現れるもの。落ちは、これらが「猿知恵だ」と口走るところ。その後は語られませんが、おかみさんの顔色の変わりようが想像されます。

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