コラム「江戸と上方の対比に学ぶ会話の妙」―落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ―【14】

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コラム「江戸と上方の対比に学ぶ会話の妙」―落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ―【14】

 近年、落語の人気が急上昇。この落語ブームにあやかって、落語に見るコミュニケーション術を、本コラムではお話ししていきます。
(文/山田敏弘〔岐阜大学教育学部教授、専門:日本語学・方言学〕)

取り入れたい、道中を面白く聞かせる技

 落語の本場はどこかと問われて、みなさんはどこを思い浮かべますか。現代の公演数で言えば、圧倒的に東京ですが、歴史の長さからして上方落語も、ひけをとりません。

 東西の落語は、独自に発展してきたことから、ちょっとした違いがあります。

 まずは、膝隠し(ひざかくし)と見台(けんだい)です。江戸落語では、基本的に噺家の前に膝隠しを置くことはまれです。おかげで、着物の裾まで見えます。よく落語で歩いていることを表現する場合に、ひざで歩く仕草をしますが、演台がないほうが面白く見えることがあります。

 一方の上方落語では、見台がつきものです。これで拍子木を打ったり小道具として使用したり、独特の演出をします。故三代目桂米朝さんが、その理由を「軽業(「桂米朝上方落語大全集4」)」のまくらで説明していますが、上方落語は、もともと屋外の「辻ばなし」として始まったために、関心を引くために用いられたのだそうです。

 余談ですが、落語に関心を持ち始めたばかりの方は、米朝さんの落語を聴くと、話や落語自体の背景もよくわかります。

 さて、米朝さんには「旅のはなし」として、多くの旅ネタが収められた全集があります。上方落語には、この旅話が多く、伊勢参りがテーマになった話もいくつかあります。なかでも、旅でいたずらが過ぎ、ひとり参詣の旅から外され故郷に帰らされたことを恨みに思った男が、村に残った女性たちをすべて坊主にしてしまう「百人坊主」などは、奇想天外な傑作です。

 日々、出張に明け暮れるビジネスパーソンも、上方落語にあやかって、道中を面白く聞かせるなんて技があれば、商談も盛り上がること請け合いです。

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