攻める中小企業 勝負の一手【5】ビューセンド・アイシーティー ~遠隔支援で医療問題の解決を目指す~

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攻める中小企業 勝負の一手【5】ビューセンド・アイシーティー ~遠隔支援で医療問題の解決を目指す~
日本大学歯学部付属歯科病院ではラオスの病院と回線を結び、医師2人で診断を行う

 国内には現在、約380万社の企業があり、このうち中小企業に分類される会社は99%以上を占めます。国内の経済基盤を支え、地域経済の活性化を担う、日本経済の「根幹」 ともいえる中小企業には、長年培った伝統を生かして年月を重ねている会社もあれば、最新のIT(情報技術)システムを導入し、独自の経営戦略を打ち出して事業展開をしている会社もあります。

 この企画では、資金や人材が限られる中でITの利活用に積極的に取り組んだ結果、一定の成果を上げ、経済産業省の「攻めのIT経営中小企業百選」に選ばれる理由となった活動事例を基に、将来を見据えてしっかりと前を向く中小企業について焦点を当てます。

 今回は地域格差をなくし、全国どこでも高度な医療が受けられる「医療の均てん化」の実現を目指すビューセンド・アイシーティー(東京・豊島)をクローズアップします。

※本コンテンツは転職情報サイト「日経キャリアNET」の記事を転載しました。
元の記事はこちら>> https://career.nikkei.co.jp/contents/100sen/05/

遠隔医療支援システムで医療を変える

 かかりつけ医のいる地元のクリニックで高度医療が受けられるとしたら、どんなに便利だろうか。一見すると夢のような話に聞こえるかもしれないが、クラウドを活用した遠隔医療支援システムによって、その夢が今まさに現実になろうとしている。

 この画期的なシステムを生み出したのが、ベンチャー企業のビューセンド・アイシーティー。国内の医療を取り巻く状況について、同社の嗣江建栄社長は「医療費は約40兆円にのぼり、中央と地方の医療機関では連携がうまく図れず、非効率な重複検査が行われている。大学病院などに患者が押し寄せる一方で、近隣のクリニックなどは閑古鳥」と嘆く。高価な医療設備、例えばコンピューター断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)などを導入しても活用できないまま、閉院に追い込まれるケースもあると指摘する。

 こうした問題点を解決するため、嗣江社長は2007年ごろからITを活用した遠隔画像診断支援サービスの仕組みづくりに取りかかった。自ら病院に出向き、現場の医師から要望を吸い上げ、厚生労働省や経済産業省の職員らとともに、遠隔診断の安全性を調査しながら実証実験を重ねた。

3者すべてがウインウインの関係に

 遠隔医療支援システム「ViewSend」は、中央と地方の医療機関を結ぶプライベートクラウドを利用した遠隔画像診断支援システム。中小病院や診療所で撮影した画像を大病院に送信して画像診断を依頼すると、翌診療日までに画像診断専門医から依頼施設にカンファレンス付きの診断報告書が返信される。

 画像の撮影を行った医療機関には診療報酬として初診料や検査料、画像診断料およびデータ保存料などが入り、画像診断を行ったドクターの元には読影料が支払われる。画像診断以外の雑務(読影料の配分、読影料支払代行など)は、すべてViewSendが担う。

 運用ルールを構築する中で最も苦労したのが「画像診断医の仕事のモチベーションを維持する仕組みづくり」だったと嗣江社長は振り返る。自分の患者を診るときと同じ水準で診断してもらうため、画像診断医に病院の給料とは別に読影料を払うようにしたのはこのためだ。

 経験の浅いドクターが診断する場合は、先輩ドクターにも画像を確認してもらうダブルチェック体制を採用し、収入を得ながら技術を磨ける仕組みも構築した。「地域の医療資源を有効活用し、診療報酬も受け取れるのがViewSendの強み。カンファレンス付きの診断報告書は地方医療レベルの向上にもつながる」と嗣江社長は意気込む。

 患者は地元にいながら高度医療が受けられるため、待ち時間や交通費などが軽減でき、中央の医療機関の混雑も緩和できる。スピーディーな診断は病気の早期発見をもたらし、医療費抑制にも役立つと、様々な効果を訴える。

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