外国籍学生の採用と日本企業の多様性への対応について

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外国籍学生の採用と日本企業の多様性への対応について

 日本企業の経営課題のひとつとして、多様性への対応が挙げられる。女性やシニア、さらには高度外国人材などの多様性を取り入れて世界で勝ち抜く競争力に変えていくことが、重要とされている。そのうち外国人材としては留学生や海外大学の日本語能力を有する学生にも注目が集まっている。しかし、留学生の日本企業への就職率は希望者の3割台に留まり、さらに海外大学生にいたっては、留学生以上に日本企業への道のりは遠い。

 2016年の内閣府による日本再興戦略では、留学生の就職率を3割から5割に上げる目標が掲げられた。大学等において、入学後早期からの日本での就職を前提とした日本語習得に向けて学習機会を提供することや企業と大学が連携して、中長期インターンシップの構築などが盛り込まれている。

 就職率が低い原因としては、学生側からは日本の就職制度や企業文化の分かりにくさ、雇用制度への不安が指摘されている。一方、採用する企業側からは学生の日本語能力が十分でないことや大企業志望が強く中小企業への興味が低いなど、双方の間には理解不足と言う溝も存在する。こうした理解不足を解消して政策や戦略の実効性を上げていくには何が必要なのだろうか?
(文/日経HR 代表取締役社長 長谷川俊男)

(1)日本の雇用制度・企業文化の理解促進

新卒一括採用をどう受け入れるか

 まず「新卒一括採用」が主流の日本企業の特殊性や企業文化を理解しなければ、就職への道は開けない。理解し受け入れなければ働くこと自体がおぼつかない。

 留学生が日本の新卒就職制度を受け入れるには、様々な問題点が指摘されている。今春、発表された経済産業省(以下、経産省)のアンケート(注1※4ページ目、以下同)においても、留学生や元留学生の7割以上が日本は魅力的な場所だが、日本で働くことは魅力的ではないと答えた人の割合は5割を超えている。その理由としては仕事内容が明確ではないまま行われる新卒一括採用や、入社後のキャリアパスの不透明さ、昇進の遅い年功制度など日本型雇用制度が就職を阻んでいると指摘している。

 しかし、この問題の解決は容易ではないが一概に日本の制度の独自性を否定して収まるものでもない。新卒一括採用制度はなくならないし、終身雇用も年功序列文化はむしろ、日本企業の強みとし評価されている。

 日本的経営の特徴として、「終身雇用」「年功序列型賃金」「企業別組合」が古くから指摘されている。企業環境が変わりつつある現在、「年功序列賃金制度」は、成果や実績に応じたものに変わりつつあるが、終身雇用と賃金体系以外の年功序列文化は大半の日本企業に今でも根強く残っている。

 従来、終身雇用は従業員の雇用を長期間保証することで技術やノウハウの蓄積を促し、企業の発展へ貢献する意識を高めることで成立している。終身雇用は中途採用が限定され、新卒一括採用により定年まで勤務することが企業文化の理解を促し、従業員間の協力や合意形成をスムーズなものにしている。

 結果的に雇用の流動性は低く、新卒就職者の退職率は3割に留まっている。今後も欧米型の就職制度へ移行する企業が増えていくことは想像しがたい。最近では新卒採用がうまくいかないため、通年採用や中途採用の比率を上げる企業も増えているが、基本的には終身雇用を前提とする新卒一括採用は継続していく。

総合職の意味するもの

 さらに、総合職採用の意味するものを理解させることも重要である。理系学生の専攻・研究分野は、採用に際しては専攻に基づいた研究職として採用されるケースが多い。一方、文系学生は専攻分野に関係なく、総合職として採用される。一般職や特別職といった区分も存在するが、大半の企業は総合職としての採用を行う。

 入社後は本人の適性や希望が反映されて職種が決まる場合もあるが、大学で法律を専攻した社員が営業職となることもあれば、マーケティング専攻でも経理や人事部に配属されることもある。総合職は様々な職種を経験することで、将来の幹部候補として育成されていく。

 実際、日本の大企業の研修制度は重層的で様々な体験を習得できる機会になる。理系学生でも研究職以外の職場体験や研修機会が与えられ、自分が専攻した以外の分野の知識習得も可能である。ビジネスのマナーやプレゼンテーションのスキルまでもが研修の対象となる。将来、海外大学でのMBAコース専攻や留学の機会も与えられる。総合職とは将来への幹部候補生としての可能性を託された存在であり、日本企業固有の存在と言える。

 終身雇用や総合職採用については、採用企業はもとより、大学側も理解促進に努めなければならない。日本再興戦略では留学生の日本企業就職率を5割に上げることを目標にしており、日本語教育・中長期インターンシップなどのプログラムを大学が設置できるよう支援するとしている。

 しかし、これだけでは不十分で、日本独特の商習慣や企業文化を学習するプログラムも同時に開設すべきである。サブカルチャーや食文化は知っていても、現行の就職制度や日本の企業文化に対する理解が不足してはどうにもならない。授業としてプログラム化することで、しかも短期間で効率的に行えば十分に実効を上げることは可能である。

 また、日本に留学する以前の段階で海外大学における日本語教育の一環として日本企業について理解を深めるプログラムを設けることも考えられる。海外で日本語を専攻する学生にとって留学は手段に過ぎず、日本での就職を目的にするケースも多い。日本貿易振興機構(ジェトロ)や国際交流基金など政府系機関による日本語教育の普及や文化理解の促進とともに、日本企業の制度や商習慣をプログラム化することも提案したい。

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