成長企業の研究 ~フィンテック関連業界~

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成長企業の研究 ~フィンテック関連業界~
フィンテックには金融機関をサービスの提供先とする「共生型」と、自ら市場参入し金融機関と競合する「破壊型」がある。

 成長分野に注目し、今後さらなる成長・拡大が期待できる業界や企業を紹介します。就職活動では、世の中の動き、社会のニーズなどを汲み取りながら、伸びる業界・企業を選びとることも大切な視点の1つです。今回は「フィンテック(Finance+Technology)」を取り上げます。
(文/武蔵野音楽大学就職課主任 兼 会計学講師 大内孝夫 ※プロフィルは2ページ目)

金融インフラの改革を促すフィンテック

 今回は「成長業界」として「フィンテック関連企業」を取り上げます。「フィンテック」とは「Finance(ファイナンス)」と「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた造語で、ここ2、3年くらい前から頻繁に使われるようになった新しい用語です。フィンテックとは、IT(情報技術)を活用し金融や決済サービスなどの分野にもたらされるイノベーションのこと。例えば、ITを使って低コストで借り手や投資家などと直接取引できるようになるなど、業界の慣行をデジタルの力で改革しようとする動きと言えるかもしれません。

 金融はもともとIT技術との親和性が強く、その発展とともにさまざまな金融商品や取引手法が生み出されてきた経緯があります。それにもかかわらず、最近になって改めてその組み合わせによる造語が生まれた背景には、大きな意味がありそうです。

 ただ単に金融とテクノロジーとの融合というだけであれば、日本の金融機関には既に50年の歴史があります。その端緒といわれる第一次オンラインは1960年代。私が銀行員として働き始めた80年代中頃はオンライン化の総仕上げ、第三次オンラインへの移行が終わり、今で言うフィンテックの最終局面を迎えたかの感が漂っていました。しかし、今考えるとあれは終わりではなく、幕開けに過ぎなかったと思い知らされます。

 当時は銀行と証券会社との間で業務範囲を巡り、死闘が繰り広げられていました。「金融自由化の流れの中で、銀行の決定的な強みは『資金決済機能』にある。銀行のみが持つこの優位性だけは、証券会社など他の業態にとって変わられることはないだろう」――。新入行員研修で当時の調査部長がこのように声高に叫んでいたことが、昨日のことのように思い出されます。

フィンテックの3つの方向性

 最近の新聞、雑誌等のフィンテックに関する解説を見ると、さまざまな分類方法がありますが、その方向性は大きく3つに分けられそうです。
 
1.新たな金融取引手法の開発や金融サービスの拡充
●スマホ、タブレットなどのモバイル端末による顧客チャネルの強化
●資産管理ソフト、人工知能(AI)などの活用による金融サービスの拡充

2.新たな資金調達手段の提供
●マーケット・プレースレンディング、クラウドファンディングなど銀行や証券会社を介さない資金調達

3.金融インフラの変革
●ビットコインなどの登場による、従来の決済制度を含む金融インフラの変革

 冒頭でお伝えしたように、金融はこの50年の歴史の中で、テクノロジーの発展とともに新たな商品やサービスを生み出してきました。上記1つ目の方向性はその延長線上に過ぎません。過去にクレジットカードやATMが画期的であったのと同様にモバイル端末が画期的であるというレベルで、「フィンテック」と名を冠するほどの新鮮味はありません。

 同様に2つ目の資金調達についても、《銀行による間接金融》⇒《証券会社による直接金融》⇒《新規事業へのベンチャーキャピタルの出資》にもう1つ矢印が加わって「クラウドファンディング」などが入るだけで、それが銀行融資や社債発行に取って代わり、資金調達段の主役となるだけのインパクトはありません。あくまで“局地戦”の域を出ない、というのが正当な評価でしょう。

 そう考えると、フィンテックがフィンテックたるゆえんは、私の新入行員時代の調査部長が声高に叫んだ「決済機能」を含む、3つ目の金融インフラの変革ではないかと思うのです。

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