「固定残業代」とは? ~その意味をちゃんと理解しないと“キケン”!~(前編)

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「固定残業代」とは? ~その意味をちゃんと理解しないと“キケン”!~(前編)
このような表記には注意しよう!(写真はイメージ)

 「初任給:月額24万円(固定残業代含む)」――。就職情報サイトなどで企業の求人情報を見ていると、このように表記している企業があります。実はこれ、学生にとって“キケン”な表記なのですが、その意味をしっかり理解していますか?

 市民団体「ブラック企業対策プロジェクト」のメンバーで、労働問題に詳しい法政大学の上西充子教授は「求人情報、特に給与や福利厚生の項目はしっかり見て、理解しておかないと、内定後や入社後に大変な目に遭ってしまいます」と注意を喚起します。求人情報を見るときの注意点について、上西教授に解説していただきました。前編、後編の2回に分けて紹介します。

残業100時間しても月収24万円!?

 ――冒頭で挙げた「初任給:月額24万円(固定残業代含む)」の表記は、何が問題なのでしょうか?

 「固定残業代」はその呼び方はさまざまですが、一定時間分の時間外労働(残業)を最初から見込んで、その分の賃金を給与に入れている制度です。制度やそれを表記することは違法ではありませんが、冒頭の表記では、「1カ月に何時間の残業を含んでいるのか?」「基本給以外の固定残業代の金額はいくらか?」が分かりません。

 これでは、1カ月に100時間を超える残業(1日に5時間の残業!)をしたとしても、毎月支払われる賃金は24万円ということも考えられます。

 ――厚生労働省の「青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)」の指針では、固定残業代の詳細な明示を求めています。

 2015年10月から「若者雇用促進法」が順次施行されており、新卒をはじめ若者を対象とした求人の場合は、募集段階から「固定残業代(名称のいかんにかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金)を採用する場合は、固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うことなどを明示すること」と指針が出ています。

 ただし現時点では、しっかり明記している企業はそれほど多くありません。そのため、学生自身が判断できる知識を身に付けておかなければならないでしょう。

「裁量労働制」「年俸制」も注意が必要

 ――固定残業代の表記については、どのような書かれ方であれば十分といえるのでしょうか?

 例えば、
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 ●初任給:月額24万円
  ※基本給17万3000円、40時間の固定残業代(5万円)を含む
  ※月40時間を超えた時間外労働は、別途手当あり
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といったように、「基本給の金額」「固定残業代の時間数と金額」「固定残業代の規定時間を超えた場合の手当」について書かれていることが望ましいと言えます。

 固定残業代の金額だけでなく、基本給の明記も必要な理由は、初任給(ここでは24万円)から固定残業代(ここでは5万円)を差し引いた金額のすべてが基本給とは限らず、企業によっては各種手当を含んでいるケースもあるからです。手当とは「住宅手当」や「通勤手当」などです(この企業の場合は、1万7000円の何らかの手当が含まれています)。

 また、固定残業代の制度を定めている場合、企業は実際の労働時間が短いとしても規定の残業時間数分(ここでは40時間分)の残業代を支払わなければなりません。ということは、学生はこのような求人表記を見たとき、「毎月40時間の残業は見込まれているのだな」と気づかなければならないでしょう。

 ――注意すべき表記としては、他にどのようなものがありますか?

 「裁量労働制」や「年俸制」の表記も注意が必要です。例えば、
====================
 ●初任給:大卒/月額28万円
  (※裁量労働制適用あり)

 ●初任給:大卒/年間400万円(年俸制)
  (※月給25万円×12カ月、賞与50万円×2回)
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といった表記です。

 そもそも裁量労働制とは、専門性が高いために業務の遂行にあたって時間配分を含め裁量度が高い仕事に従事する社員を対象とした制度。裁量労働制の場合は残業時間に応じた割増賃金の支払いは必要ありませんが、これから仕事を覚えていく1年目から裁量労働制ということは、あまり考えられないと私は思います。一方、年俸制の場合は残業代の支払いが必要です。

 また、1年目から退職金を分割して、前払いしていく企業もあります。一般的に退職金は会社を辞めるときに支払われるものですが、それを最初から分割して支払っていくため、退職するときはもらえないということです。

 そういった企業は、初任給が退職金を含んだ金額なので、高くて当たり前。退職金分を差し引いて考える必要があります。ただし、前払い退職金の金額を求人段階では詳しく書く必要はないため、基本給の金額は不明という企業があります。

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