留学生の就職活動【1】識者に聞く 留学生就職の実態と就活支援の提案(1)

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留学生の就職活動【1】識者に聞く 留学生就職の実態と就活支援の提案(1)

 政府の「留学生30万人計画」などを背景に、海外から日本の大学などへ留学する外国人が増加しており、卒業後は日本で働きたいと希望する留学生も多数います。そんな外国人留学生は、どのように就職活動に取り組んでいるのでしょうか。識者へのインタビューや大学の就職支援の実例を紹介します。

 第1回は一般社団法人留学生支援ネットワークの久保田学・事務局長に、留学生の就職事情や就活支援のポイントなどについて解説していただきました。2回に分けて紹介します。
※一般社団法人留学生支援ネットワーク
https://www.issn.or.jp/

就職希望者のうち、就職できるのは5割程度

――日本で学ぶ留学生の状況を教えてください。

 日本にいる留学生は約21万人(2015年5月1日現在)。これは大学や大学院、専修学校、日本語教育機関などに在籍する人数です。

 出身国・地域別でみると、中国が約45%を占めて最も多く、次いでベトナム(18.7%)、ネパール(7.8%)、韓国(7.3%)の順になっています。最近の傾向として留学生数が中国や韓国は前年比で横ばい、または微減となっているのに対して、ベトナムやネパール、ミャンマー、スリランカは前年比1.5倍くらいに増加しています。

――卒業後、日本で就職をする留学生はどのくらいいますか?

 日本学生支援機構(JASSO)によると、大学など高等教育機関の修了者は約3万7000人(2014年度)。このうち日本で就職したのは約1万人でした。

 日本人学生と違い、すべての留学生が修了後にそのまま日本で就職を希望しているわけではありません。留学生のうちそのまま日本で就職することを希望しているのは約6割です。ただ、希望者の中で実際に就職できるのは5割程度ではないかと推測でき、大卒の就職内定率の約97%には遠く及びません。

留学生が日本の就活で苦戦する3つの要因

――留学生の就職希望者のうち、日本で就職できているのは約半数です。就職できない理由が何かあるのでしょうか?

 主に3つの要因があります。1つ目は日本の就活が世界に比べて独特の形式で行われていること。2つ目は留学生の日本語能力の問題。3つ目は企業の求人数の問題です。

 1つ目の日本の就活が独特であることについては、具体的にいうと採用試験の方法とスケジュール、評価指標の違いです。就活時期(スケジュール)は、日本が世界で最も早く始まります。アジア圏では中国や韓国も比較的早期に行われていますが、卒業年次から開始されます。また、欧米を中心に卒業後に就活に取り組むのが一般的で、それがグローバルスタンダードといえるでしょう。

 留学生たちは日本の就活スケジュールを知らずに、乗り遅れるという現象が起きています。2018年春卒業予定者の就活スケジュールは大手企業を中心に(3年生の)3月に企業の広報活動が解禁され、(4年生の)6月から選考活動がスタートします。3月から就活を開始している留学生も最近は増えてきましたが、自己分析や業界・企業研究、エントリーシート(ES)対策などの準備を3月までに取り組んでいる留学生は多くないのが現状です。

――大学では留学生に対して、スケジュールを教えていないのでしょうか?

 留学生向けに就活ガイダンスなどを開催している大学は増えています。ただし、留学生に対してうまく伝えられていなかったり、そもそも留学生自身がガイダンスを欠席してしまったりということがあるようです。

ESの“日本語の作文”に苦労。その理由は?

――日本の就活における評価指標の違いとは?

 これが日本と世界の最も異なる点ですが、人材評価のグローバルスタンダードは成果主義。それは新卒の採用であっても同じです。

 成果主義であれば、応募者が現在持っている知識・スキルや大学の専攻、成績などを評価して、職種別に採用します。学生は就活の試験のために取り立てて準備をする必要はなく、プロフィールシートはそれほど悩まずに書くことができます。

 一方、日本の採用の評価基準はポテンシャル(潜在能力)であり、今ある知識・スキルはそれほど求められていません。理系は別ですが、文系の場合は大学で何を学んだのかといったことは、ほとんど関係しません。

 就職希望者は自分のポテンシャルを「自己PR」「学生時代に頑張ったこと」「志望動機」などの設問の中で“日本語の作文”を書かなくてはなりません。しかし、留学生はその作文が書けず、非常に苦労します。

――留学生が苦労するのは、日本語で書かなければならないからですか?

 ここでいう苦労とは日本語能力ではなく、作文で求められる内容です。これが日本の就活における一番の問題点です。

 例えば、志望動機はどこの企業でも聞かれる設問で、文字の意味を考えると「その企業を志望する理由」です。それであれば「なぜ自分はこの企業を志望するのか」を書けば、日本語的には“正解”です。

 しかし、日本の採用選考ではそれだけでは不十分となります。「なぜ他社であるA社、B社ではなく、このC社を志望するのか」、「自分は入社したらどういう貢献ができそうか」などを暗黙の了解で記載することを求められます。

 しかし、それは設問の日本語だけを見ても分かるはずがなく、企業が知りたい内容を読み取って書かなければならず、留学生には理解することができないでしょう。その結果、どんなに優秀な学生でも選考を通過できるESを書けず、書類選考で埋もれて不通過となってしまいます。

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