採用スケジュール変更の<混乱騒動記>【1】

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採用スケジュール変更の<混乱騒動記>【1】

 2016年度(2016年4月入社)の採用試験では、日程が後ろ倒しになり、大混乱があった。就活が長期化し、就活生にとっては大きな負担になった。しかも、2017年度の就活で、また採用日程が変更されることが決まっている。これから就活をする学生にとっては大きな問題だ。しかし、「こうした混乱はなぜ起きたのか?」については、最近の報道だけ見ても理解しづらいだろう。そこで、第1回は、「(2016年度採用で)採用日程の後ろ倒しによる混乱はなぜ起きたのか? 誰が言い出したことなのか?」について分かりやすく解説したいと思う。
(文/就職問題研究会 ※プロフィールはページ下部)

採用日程変更の混乱はなぜ起こったのか?

 まず、結論から言うと、採用日程が後ろ倒しとなったことの発端は安倍晋三首相だ。

 2013年4月に安倍首相は、日本経済団体連合会(経団連)、経済同友会、日本商工会議所の首脳と会談し、大学生の就職活動の解禁時期を遅らせるよう要請した。具体的には、①広報活動(企業エントリー・説明会など)の解禁を「大学3年生の12月」から「大学3年生の3月」に遅らせる。②選考活動の解禁を「大学4年生の4月」から「大学4年生の8月」に遅らせる――ことを要請したのだ。経済界はこの要請を受け入れ、翌年度から採用日程を変更した。

日程がガチガチに指定されていたのが問題

 13年当時、学生の就活の「早期化」「長期化」は社会問題化しており、安倍首相が経済界に「学生の負担を減らすように、採用日程を短縮化する方向で検討してほしい」くらいであれば、経済界もどうすればベストかを検討できたはずだ。しかし、安倍首相が具体的に日程を示したのが、問題だった。なぜなら、この日程変更だと、学生の負担が増すのは、採用の現場を知っている者にとっては自明だったからだ。

 簡単に説明すると、10月1日が正式内定となっている。内定式は10月1日に実施する企業が多く、ここがゴールだ。以前は4月1日から10月1日まで6カ月間あった面接期間が、8月1日から10月1日までの2カ月になってしまった。面接をする期間が少なすぎるので、企業はフライングをして、早めに学生と接触するようになった。その結果、就活期間が長期化したのだ(注:長期化には、これ以外にも要因はある)。
 
 いずれにしても経済界としては、この日程変更を受けるか、受けないかの二択しかない状態だった。

なぜ、安倍首相は採用日程の後ろ倒しを言い出したのか?


 たしかに、大学関係者の中には、学業の支障がなくなるように採用日程を改善できないかと発言する人は以前からいた。採用日程を後ろ倒しにすると、就活の時期が短くなり、就活生の負担が少なくなるという説も、もともとあった。安倍首相の要請は、それらの意見を受けてのことだろう。就活生の負担を減らして本分である学業に専念させる、ひいては国際競争力を高めたいと考えたのではないだろうか。

 しかし、スケジュールの変更によって、かえって就活期間が長期化し、学生も企業も負担が大幅に増えてしまった。採用日程は複雑な事情が絡み合っているので、変更のためには、十分な調査と検討が必要なのだ。

 先日、経団連は面接開始時期を「大学4年生の8月」から「大学4年生の6月」に変更することを発表したが、これも企業や大学の現場の声を十分に集め、十分な検討をしたものとは思えない。拙速な変更は改悪にしかならない可能性もあり、懸念材料は多そうだ。

 次回は日程変更による長期化の要因の詳細、学生側と企業側それぞれで発生した問題について詳しく解説する。

<プロフィール>
外資系人事コンサルティングファームのコンサルタント、メーカーの人事担当者、人材情報系のライターなど、複数のメンバーで構成。

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